第1章

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バスは一時間ほどで、俺の家に近いバス停に着いた。 俺はバスを降りて、家路を歩く。 同じような家並みが並ぶ住宅街の中で、よく自分の家がわかるものだなと、我ながらちょっと不思議な気がした。 それでも家に帰り着き、鍵を回して中に入る。 そのまま、階段を上がって自分の部屋へと入り、制服を脱いで部屋着に着替える。 深緑色のスウェット上下。 ベッドへと倒れ込み、うつ伏せのまま暫く何もしないでいた。 考えることもしない…。 ただボケ-っと、枕に顔をうずめながら、深く深く深呼吸をくり返す。 「兄貴、帰ってるのか?」 部屋の中に、弟が入って来た。 俺は構わず深呼吸をくり返す。 「兄貴、制服ぐらいちゃんと片付けろよ。」 「うるせえな、てめえは受験勉強でもしてろ!」 いちいち細かいことを言うこの弟は、来年高校受験を向かえる。 運動神経の良い弟は、サッカーの有名な高校からスカウトが来ているので、毎日気楽なものだろう。 「まったく、兄貴はだらしねえな…。」 ぶつぶつと言いながら、やっと部屋を出ていってくれた。 「おかえりぐらい言いなさいよ。」 今度は姉貴がやってきた。 「あんたね、終業式に出ていなかったでしょう。私が迷惑するんだからね、ちゃんとしなさいよ。」 姉貴も同じ高校に通っている。 来年受験で、今年の夏休みにはどこかへ夏期合宿に行くらしい。 「いつまでベッドでそうしているつもり!?起きて宿題くらいしなさいよ。」 「夏休みは明日からだ。だから宿題も明日から。」 呆れたような溜息を残し、姉貴も部屋を出て行った。 深呼吸をくり返す。 枕に顔をうずめたまま。 何も考えたくない。 考え出すと、とめどなく不平不満が押し寄せて、暴れてしまいそうな自分に恐怖を感じる。 いつのまにか取り付けられた風鈴が、ちりーんと鳴る。 そしてその後、雷の音。夕立ちがやってきたのを、耳で感じた。
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