***

2/4
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
バイク買ったぜ。美味い魚でも食いに行こう。 彼は要件だけ端的に話すと、唐突に電話を切った。 昔からそういう奴だ。 私も僅かな小遣いを細々と貯め、やっと最近、あちこちヨレが目立つ中古のバイクを手に入れたところだった。 ブランクは十数年。 彼も私も、今流行りの中年リターンライダーというやつだ。 その日、約束の時間より少し早めに合流場所である高速のSAに着くと、既に彼は最新型のビッグバイクにまたがり、得意そうな顔をして待っていた。 そのバイクじゃ、楽勝だな。 不敵な笑みを浮かべている。 高速を西へ向かう。 春先の冷たい空気が、走るうちに心なしか、ゆるやかに暖かくなってゆく。 彼は排気量にモノをいわせ、軽々と私の先を走って行く。 昔は負けたことなかったのに、と少しムキになっている自分がいる。 暫く走った後、高速を降り、海へと向かう。 やがて細く曲がりくねった路地へ。 何度も地図をみるが、既に現在地がわからない。 ただ道の続くままバイクを走らせる。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!