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バイク買ったぜ。美味い魚でも食いに行こう。
彼は要件だけ端的に話すと、唐突に電話を切った。
昔からそういう奴だ。
私も僅かな小遣いを細々と貯め、やっと最近、あちこちヨレが目立つ中古のバイクを手に入れたところだった。
ブランクは十数年。
彼も私も、今流行りの中年リターンライダーというやつだ。
その日、約束の時間より少し早めに合流場所である高速のSAに着くと、既に彼は最新型のビッグバイクにまたがり、得意そうな顔をして待っていた。
そのバイクじゃ、楽勝だな。
不敵な笑みを浮かべている。
高速を西へ向かう。
春先の冷たい空気が、走るうちに心なしか、ゆるやかに暖かくなってゆく。
彼は排気量にモノをいわせ、軽々と私の先を走って行く。
昔は負けたことなかったのに、と少しムキになっている自分がいる。
暫く走った後、高速を降り、海へと向かう。
やがて細く曲がりくねった路地へ。
何度も地図をみるが、既に現在地がわからない。
ただ道の続くままバイクを走らせる。
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