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カモメが飛んでいる。
たった一羽で。
広がる空と、大海原。
その狭間を、カモメが飛んでいる。
海岸はどこにも見えない。
なのに怯えた様子もなく、飛び続ける。
一途に、何かに向かって。
目指すものはこれっぽっちも見えないのに。
お腹が空いたのか、カモメは急降下をして魚をとらえる。
そしてまた、空へ飛び立つ。
今度は遥か上空へ。
太陽を目指して、飛び立つ白い羽。
昼と夜との境が見えて来た。
それでもまだ、上昇を止めないカモメ。
しかし、羽ばたきに力強さは無く、
一瞬のうちに、落ちていく。
落ちる途中で、羽ばたくカモメ。
けれどその行為は、落下の速度を速めるだけで、
海面にたたきつけられるように落ちたカモメは、
死んでしまったかのように、波間に浮かぶ。
時がたち、カモメは息を吹き返した。
そして暫く波間を漂うと、
もう一度空を目指して、飛び立った。
白い雲へと、突き刺さるように、飛んでいく。
必死な様子で、飛ぶカモメ。
なにを目指して、それほどまでに、
目指すものさえあるのかどうか、
それすらわからず、俺は見ている。
目が醒めると、既に夜だった…。
俺は台所に向かい、テレビを見てくつろぐ家族を見つけて、なんだかホッとした。
姉貴とかあさんが、テレビを見て笑っている。
親父は雑誌を読んでいて、弟はソファーに寝そべっている。みんなそこにいた。
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