第1章

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俺と斎藤は、海岸線を南に歩きながら、岩場の影にたどりついた。目の前には、青い海と白い雲。耳をすませば、岩場の向うから観光客のはしゃぐ声が聞こえる。 空を舞う、一羽の変り者…。 「…」 「…」 俺達は二人して、暫くの間無言でよりそい座っていた。波の音が、ザザーと何度もくり返す。 俺の頭の中には、昔の思い出がいくつもいくつもよぎっていく。 中学時代…。 そのほんの一年間。 入学してはじめて、同じクラスメイトになった。 最初の班きめで、偶然同じ班になった。 となりの席に座ることは無かったが、いつもすぐそばに座っていた。 何かあると、言い合いになった。 なにかと、つっかかってきた。 時々、優しかった。 笑った顔が、可愛かった。 少しハスキーボイス。 そっととなりに目をやると、あの頃のままの斎藤が海を見つめて座っている。 腕の中の犬も、一緒に海を見ている。 俺の口元に、微笑があふれ出すのを感じた。 「あっ!」 斎藤が小さく声を上げる。 目線を追いかけると、あのカモメが綺麗な稜線を描いて、空を舞っている。 「今の見た?」 斎藤が話しかけて来る。 「いや、何があったんだ?」 「あのカモメ、いますごい宙返りをやったの。」 「…ああ、ついにやったのか…」 この間までは、何度も何度も海に落ちていたあいつも、ついに念願かなったんだな…。
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