第1章

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そうして二人は、カモメの曲芸飛行を眺め続けていた。 「…ばか月、そこだっつうの…」 「あうぅ、どうなるのかな…」 どこからともなく、聞こえて来る荒い息使い…。 「…肩だよ!肩に手を回すんだよ!…」 「そうそう、そしてぐっと引き寄せるんだな…」 すっかり忘れていた…こいつらも来てたんだ…。 となりに座っている斎藤は、気づいていない様子だった。 「斎藤、ちょっとごめんな…。」 俺は斎藤の肩に手を回して、ぐっと引き寄せた。 驚いた目の斎藤、でも嫌がっている様子は無い。 「…おし、いけ!ばか月!!」 「あうぅ…」 俺は斎藤の耳許で、そっと耳打ちした。 「ほんと、ごめんな。あの馬鹿達が覗いてるんだ、またちゃんと話そうな。」 そう言って、斎藤の肩から手を離すと、きょとんとする斎藤をそこにおいたまま、岩場を翔け上がる。 岩の上に這いつくばっている馬鹿二匹を発見した。 「…よ、よう。ひさしぶりだね、高槻君…」 動揺する公一。 「あうぅ」 おろおろする義男。 「…お前らさ、気を使うって単語知らないだろう…」 呆れて仁王立ちになる俺。 「どうしたの?高槻…あ!」 斎藤も岩場を登って来て、二人を見つけ驚いた様子だった。 「覗いてたの?二人とも…」 笑いながら、そう言う斎藤。 恥ずかしそうに頭をかく、公一と義男。 空の光は強さを増し、誰か観光客の持ってきているラジオから、ビーチボーイズが流れて来る。 夏が始まる、そんな予感がした。
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