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こんどは、シン達と会わなくなった。もうそろそろ三日目だ。
斎藤と二人で、「リコレイション」へも何度か出かけたが、ママに聞いてもこの所姿を見せないと言う。
「どうしちゃったんだろうね。」
斎藤が言う。
「知らないね、あんな自分勝手なやつら。」
俺はつっぱねる。
しかし実のところ、かなり気にはなっている。
午前中に図書館へ行っても、シンの姿はない。
傷の男にいたっては、探す場所すら見当がつかない。
…ちくしょう…
言い表せない不満が胸に溜る。
彼らから感じた何かは、俺の中の何かを変えてくれると思っていた。囚われた常識や、囲い込まれた世間の習慣…そんなものから俺を解き放ってくれると思っていたのに…今更なのかな…
シンにとって俺達はもう用済みだったと言うことなんだろうか?俺達は、図書館へ入るためのだしだった…。そう考えれば、なんとなく全てにつじつまがつく。けれどそう考えてしまうと、むしょうに不満が湧き上がって来る。
そしてそのまま、八月がやってきた。「リコレイション」で斎藤と話をしながらも俺は、時々ぼーっとするようになって来た。
刺激が足りない…。
わきあがる感情がぶつかる先を見失い、からだの中からすっと抜けさってしまう感覚。
今日もシン達は来ない。
斎藤は、楽しげに昨日の出来事を話し続けている。
傷の男は、今頃どこで何を探しているのか?
斎藤の家では、昨夜両親と一緒に食事をしたそうだ。
俺は…何を求めているんだろう?
くわえたストローを上下に動かしながら、斎藤の話しに笑い、頷き、相槌をうつ。
そうしながら、頭の片隅であの二人組を探し求めている。
そんな俺に、笑顔で話しかけて来る斎藤…。
申し訳なさと苛立ちが、一緒になって胸の中で喧嘩する。
そして俺は、ストローを上下に動かして笑う…。
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