第1章

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こんどは、シン達と会わなくなった。もうそろそろ三日目だ。 斎藤と二人で、「リコレイション」へも何度か出かけたが、ママに聞いてもこの所姿を見せないと言う。 「どうしちゃったんだろうね。」 斎藤が言う。 「知らないね、あんな自分勝手なやつら。」 俺はつっぱねる。 しかし実のところ、かなり気にはなっている。 午前中に図書館へ行っても、シンの姿はない。 傷の男にいたっては、探す場所すら見当がつかない。 …ちくしょう… 言い表せない不満が胸に溜る。 彼らから感じた何かは、俺の中の何かを変えてくれると思っていた。囚われた常識や、囲い込まれた世間の習慣…そんなものから俺を解き放ってくれると思っていたのに…今更なのかな… シンにとって俺達はもう用済みだったと言うことなんだろうか?俺達は、図書館へ入るためのだしだった…。そう考えれば、なんとなく全てにつじつまがつく。けれどそう考えてしまうと、むしょうに不満が湧き上がって来る。 そしてそのまま、八月がやってきた。「リコレイション」で斎藤と話をしながらも俺は、時々ぼーっとするようになって来た。 刺激が足りない…。 わきあがる感情がぶつかる先を見失い、からだの中からすっと抜けさってしまう感覚。 今日もシン達は来ない。 斎藤は、楽しげに昨日の出来事を話し続けている。 傷の男は、今頃どこで何を探しているのか? 斎藤の家では、昨夜両親と一緒に食事をしたそうだ。 俺は…何を求めているんだろう? くわえたストローを上下に動かしながら、斎藤の話しに笑い、頷き、相槌をうつ。 そうしながら、頭の片隅であの二人組を探し求めている。 そんな俺に、笑顔で話しかけて来る斎藤…。 申し訳なさと苛立ちが、一緒になって胸の中で喧嘩する。 そして俺は、ストローを上下に動かして笑う…。
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