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その夜、奇妙な夢を見た。
空気の匂いや、風の感触、色も鮮明な夢だ。
…とても悲しく苦しい、そんな夢だった。
俺はどこか知らない神社の境内にいた。
知らないはずなのに、なぜか毎日のように来ている、そんな思いのする神社だった。
俺は怒っていた。
どうしようもない怒りで、俺の心は張り裂けそうだった。
目の前には、数十人の男たち…。
彼らの目には、嘲笑や嘲りの表情が見て取れた。
…俺は彼らに対して怒っていた…
俺の振りあげた拳は、一番手近にいた男の頬を殴り飛ばし、それを合図に、俺は怒りのまま男たちの中へと走り出す。
誰かの蹴りが俺の背中を襲う。
それでもひるまず、目に映るものを殴り飛ばす俺。
倒れては起き上がり、しばらく後方で休んでからまたかかって来る男たち。
俺は男たちの拳や足で打ちのめされ、それでも怒りは収まらず、一歩一歩前へと進んで行く。
…何人を殴り飛ばしただろう…やっと、男たちの最後方が見えて来た。
俺の目に映ったものは、衣服を乱暴にやぶかれ、顔や腕に殴られた跡のある女性の、倒れている姿だった。
とても大きな悲しみがうねりとなって、俺の怒りに注がれる。
頬に涙が流れだし、とめどない。
「…!!」
俺は女性の名前を呼んでいる。叫ぶように、確かめるように。
「…!!」
名前を呼ぶ間も、容赦なく飛んで来る男たちの蹴りや拳。
「…!!」
女性の腕が、ピクリと動いた気がした。
男たちは手に鉄パイプやバットなどを持ちだして、俺を襲い出す。
俺の中で悲しみと怒りが加速、増幅されて、何かがはじけ飛ぶような感覚に襲われた。
俺の腕はとても強く、一振りで数人が吹きとんだ。
俺の足は俊敏になり、蹴り飛ばすたびに男たちは悶絶した。
俺の周囲にたむろする男たちの顔は、さすがに少しだけ恐怖が映る。
そのとき、これまで一切仕掛けて来なかった後方の男から、何か声が発せられた。
「…!!」
その言葉に、俺の周囲の連中は情欲をたぎらせるような目つきとなる。
さらに、女性の悲鳴…。
回りを取り巻く男たちの目つきが変った。
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