第1章

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「節分、楽しかったですね。先輩」 と後輩が言った。楽しかったですねというのは、もう節分が終わって放課後の学校、教室のことだった。いつものように人気のなくなった頃合いを狙ったように後輩の女の子が僕を訪ねてきた。トコトコと可愛らしい表現をしてあげたいし、ニコニコとした笑顔はとても魅力的なのだけれど、彼女は基本的に毒を吐く。物理的なダメージはなくても、精神的なダメージが半端ないのだ。 「ああ、そうだね」 楽しかったというより、辛かったという表現が妥当だろう。僕は節分を幼稚園児の頃、やった以来だし、高校生になってやるイベントでもない。まぁ、こうやってなんでもイベントにして楽しむところが日本人らしいところだけど、限度もあるだろう。 「あれ、先輩、元気がありませんねー、あれほどハッスルしてたのに、私に強引に鬼さんのパンツを履かせて、手ぶらや、手ぶら、悪い子やのー、鬼が憑いてるんだね。豆をまいて厄払いだと私に鬼さんのパンツと鬼のお面をかぶせたのに先輩は忘れてしまったんですね。シクシク、私の柔肌には先輩の投げつけた豆のあとが残ってるのに」 「誤解を招くようなことを言うな。そもそもそんな事実はない、豆を投げつけたのは君だろうが、いきなり家に行きたいとメールしてきたと思えば、玄関の扉を開けた瞬間、鬼のお面を被せて豆を投げつけたのは君だ」 「そうでしたっけ?」 「そうだよ。あと、なんだ、そのマニアックなプレイは、危険だろ。豆をなめるな、あれ、予想以上に痛いんだぞ」 全国を探したとしても、可愛らしい後輩(自称)から豆をいきなり投げつけた先輩もいないだろう。そういったイベントならともかくとして、お宅訪問でワクワクしてた時に鬼のお面を被せられ、鬼はー外、福はー家の決め台詞と共に豆を叩きつけられるなんて誰も思うまい、さらに後輩ちゃんの記憶にはなんか重度の偽称というか、差し替えが行われ、僕が悪いようになっていた。 「マニアックなプレイですか。ところで先輩、手ぶらってなんなんですかね」 「手ぶら? いや、今はそういう話をしてるんじゃなくて」 豆を投げつけたことをいい加減、謝れと言いたいのだ。誠意や謝罪の気持ちはなくていい、ただ、一言、ごめんなさいと言ってほしい。それで許すから、 「気になりますよー先輩、もーツイッターで先輩のエロ本の趣味、公開しちゃおっかなー基本的に幼なじみ全般でー」
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