第1章

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と改めて自分の住んでる国のおかしさに気づく、気づかされる。灯台下暗しではないにしろ、そういったことに気がつきにくいものだ。 「まぁ、ヌーディズムっていうのは私からしたら原点回帰みたいなものでしょうね」 「原点回帰? 真っ裸で過ごすことのどこが原点回帰なんだ? まさか。猿になりたいとか言わないよな」 そうなってしまうと、人間をやめている。獣に戻るのと同じ行為だ。 「いえいえそうなってしまうと先祖帰りじゃないですか、人間の祖先が猿だったとしてもそうじゃありませんよ。どちらかと言えばアダムとイブのほうです」 「みんなで露出狂になってフィーバーするつもりか」 「ヌーディズムの価値観をぶち壊しですね。あれには性的な快楽は求められてませんよ。というか、そういった感情はタブーとなってます」 「君がそう言ったんだろうが、僕だってそういう視点で見たくなかったよっ!!」 いつの間にか染められていた。なんかやだ。そういう感じ。 「もう、じれったいですね。ようするに争いのない世界というやつです。真っ裸だったらナイフや銃を隠し持つことも、持つこともないでしょう?」 「確かに……だから、原点回帰なわけか」 僕らの国ではなかなか実感がわかないが、海外に出れば否が応でもでも、銃やナイフを使った凶悪犯罪に巻き込まれる可能性を考慮しなければならない、もちろん、日本でも凶悪犯罪は日夜、報道されているけれど、どこか向こうの出来事というのが実情である。 「まぁさすがに真っ裸になるのはオーバーだとしても、人は武器のない世界を望んでいるのかもしれませんね。誰だって安全な安心な世界がいいでしょうから、ある日、眉間に銃を突きつけられる世界ははっきり言ってごめんですよね」 いきなり真面目な話になってちょっと返答に困る。この子は小説家志望だと、この前、言っていたからそういったニュースや情報を詳しく調べたりするのだろうか、ま、そうではなくて単純に無知な僕に自分の意見をひけらかして自慢して、感心されたかっただけかもしれない。 「ま、先輩は原点回帰したとしても下心アリアリの変質者なんでしょうけれどね」 「真面目な話を一気に壊すな。なんで僕がそうなるんだよ」 「先輩がそういう人間だからです。魂からしてエロエロなんです」 「人間みんなエロいよ。心のどこかにエロい気持ちを隠し持ってるよ」 思わず叫んだ。
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