ファン・ラン

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 待ち合わせ時間まで、あと数分ある。  今日は早めに駅前にやって来た。広場に設置された噴水が等間隔で水を噴く。この待ち合わせ場所には数人の人間がいる。皆、携帯を気にしている。  ホワイトデーだけに男は皆普段着で決めている。俺はというと、営業スーツに営業鞄。脱げばベストなんだけど、少し肌寒いかな。  お洒落男とはほど遠い。着替える時間が無かったのは俺に恋人が居ないと信じている上司のご託を聞かされていたから。有給に関してもぐだぐだ述べていたけれどほとんど聞き流した。なんとか逃げ出して、待ち合わせ場所にいる。肌寒い風が吹く夕暮れだ。次第に街灯が灯り、公園を照らしていく。  バレンタインのときは、ピックアップトラックのタイヤがパンクして宿に入る時間がずれてしまった。  今度はそんなへまはやらない。真優も仕事で遅くなっただなんて言ってたけれども、ピックアップトラックの件は、完全に誤算だった。  真優の身体冷たかったもんな。宿に入ってから直ぐ温泉に連れていった。混浴で人も居なかったからはしゃぎすぎたかも知れない。真優が風邪引かなくて良かったよ。  とりあえず、今日のコースも決めたし、レストランもピックアップ済み。イチ押しのカクテルバーも見付けておいた。
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