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満員電車はキライだ。
ただでさえ人混みや騒がしいのは苦手なのに、何故こんなにも混み合ってる電車に乗らねばならないのか。
それもこれも、あのバカの所為だ。
「やっくん、スゴイ! めっちゃ混んでるー!」
「誰がやっくんだ」
満員電車の中、押し潰されそうになりながら隣ではしゃいでいるのは、同じクラスで学校の寮長をしている山本秋人。
ウチの学校と友好関係にある学園へ用事を足しに行くと言ったら、コイツも行きたいと言い出したから。
用事を済ませてすぐに帰れば、帰宅ラッシュに遭遇しなかった筈だ。
それなのにコイツが『あの店がみたい』だの『あそこに寄りたい』だの言うから、付き合っている内にこんな時間になってしまったのだ。
「息苦しい」
「やっくん、大丈夫? もっとこっち来る?」
ドア近くのポールにしがみついた猿……改め、山本がサラリーマンに押し潰されそうになっている俺を手招きする。
いや、この場合どこに立っていても同じじゃないか?
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