8人が本棚に入れています
本棚に追加
それは、偶然江戸の街に遊びに来ていた日のこと
私は十五だった。
・・
その日は元の姿だった。
柄にもない桃色の着物で出掛けていた。
そこで、上半身を膝に埋め、泣きそうにしている男が
江戸の街に来たら必ず訪れる、隠れ家的な甘味屋の近くの大杉のふもとにうずくまっていた。
「どうしたのですか?」
「...関係ねぇだろ。」
何処かの田舎の訛りが抜けきっていない声音が悲しそうだ。
私は何となくこの正体不明の男を抱きしめたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!