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「いや、コーチにはちゃんと言うとるから、大丈夫。それよりここ、タンコブなっとんちゃう?」
不意に三輪先輩の手が額に触れる。
ゴツゴツしていてデカくて。
バスケをやっているからか、自分よりもずっと男らしいその手に触れられ、
ちょっと、うわ、きしょ。とか思ってしまった。
いや、だって仕方ないっしょ?
どうせ触られんなら、女がいいに決まってる。
男に触れられたって、嬉しい事なんか微塵もないし。
「あ、ホラやっぱ腫れとるやん」
困ったように眉を下げる三輪先輩は、感情表現が豊かだと思う。
気が強いだけかと思っていたけれど、どうやら思っていた以上に優しいのかもしれない。
「いや、大丈夫っす。もう起きれますし」
そう言って手をつきながらグッと上半身を起こした瞬間、微かに左手首がズキッと痛んだ。
「ぃっ……た」
「え?手首も怪我したんか?」
慌てて俺の手首を支える三輪先輩は、心配そうに痛んだであろう部分を眺めている。
「あ、いや。冷やしとけば大丈夫っすよ」
「……ごめんなぁ。カメラ撮るのに支障きたすんちゃう?」
「いや、多分大丈夫っす。これぐらいなら」
なので。
ちょっと、離れてもらえないっすかね?
未だ俺の手首を握ったままの三輪先輩は、かなり近い距離で俺の顔を覗き込んでいる。
男同士じゃ、中々あり得ない距離っすよね?
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