168人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの……いや、ほんともう、大丈夫なんで」
へらりと微笑みながら、その手を振り解こうと軽く右手で押し退ける。
いや。
押し退けられるぐらいの強さで押したつもりですが?
なんで、まだホッペさすってんの?
え、てか、ホッペに移動した理由はなんですかね??
「…………」
「……」
訳の分からない沈黙の中、間近で目が合っている三輪先輩は、
ちょっとビックリするほど優しい笑みを浮かている。
俺は苦笑いを浮かべながら「へへ」と意味のない愛想笑いで、何とかこの雰囲気をぶち壊そうとした。
「……なぁ、カンベ君?」
「……はい?」
「なんで前髪留めてんの?」
「………………はい?」
いきなり髪の毛の話を振られ、一瞬思考が遅れてしまう。
それでもこの空気が壊れる為にと、慌てて言葉を探した。
「あ、えっと……っすね。あの、下向くと髪が邪魔だから……ん」
ん。
ん?
……へ、ぁ、……え??
ちゅっと軽く触れた唇が離れ、いま自分が何をされたのか分からず。
とりあえず、頭の中が真っ白になった。
「はは、可愛いなぁ、カンベ君。もっかいイイ?」
「ーーーーぇ、無、」
理。
無理、って言おうとしたのに。
グッと後頭部を引き寄せられ、そのままさっきよりも深い角度で唇が触れる。
その瞬間。
俺の馬鹿な脳みそは、やっとこさ動き始めた。
それはもう、MAXのスピードで。
最初のコメントを投稿しよう!