悪夢の始まりっす。

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「あの……いや、ほんともう、大丈夫なんで」 へらりと微笑みながら、その手を振り解こうと軽く右手で押し退ける。 いや。 押し退けられるぐらいの強さで押したつもりですが? なんで、まだホッペさすってんの? え、てか、ホッペに移動した理由はなんですかね?? 「…………」 「……」 訳の分からない沈黙の中、間近で目が合っている三輪先輩は、 ちょっとビックリするほど優しい笑みを浮かている。 俺は苦笑いを浮かべながら「へへ」と意味のない愛想笑いで、何とかこの雰囲気をぶち壊そうとした。 「……なぁ、カンベ君?」 「……はい?」 「なんで前髪留めてんの?」 「………………はい?」 いきなり髪の毛の話を振られ、一瞬思考が遅れてしまう。 それでもこの空気が壊れる為にと、慌てて言葉を探した。 「あ、えっと……っすね。あの、下向くと髪が邪魔だから……ん」 ん。 ん? ……へ、ぁ、……え?? ちゅっと軽く触れた唇が離れ、いま自分が何をされたのか分からず。 とりあえず、頭の中が真っ白になった。 「はは、可愛いなぁ、カンベ君。もっかいイイ?」 「ーーーーぇ、無、」 理。 無理、って言おうとしたのに。 グッと後頭部を引き寄せられ、そのままさっきよりも深い角度で唇が触れる。 その瞬間。 俺の馬鹿な脳みそは、やっとこさ動き始めた。 それはもう、MAXのスピードで。
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