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「カンベ、サッカー部の取材がそんなに嫌なのか?」
部長の言葉に、俺は正直に首を縦に振る。
「他の部員にも日の目を見るチャンスを与えてあげて下さい。俺は辞退しますから」
「だから、会議に参加しない部員なんて、取材やるわけないじゃん」
もっともな部長の言葉だが、俺だって出来ればやりたくない。
いや、むしろ絶対やりたくない。
サッカー部への密着なんて、またユズタケにいびられるに決まってるのに。
あの、鬼。
悪魔。
人でなし。
ていうかもう、人じゃないっすね。
「…………悪い顔なってるぞ、カンベ」
相変わらず呆れた顔のコタロー先輩は、さらにそこへ憐れみの感情を足した目で見て来る。
いや、あんたの彼氏のせいっしょ!!
「…………あ、じゃあカンベ。お前今度はバスケ部の密着行ったら?」
「え」
思わぬ言葉に一瞬目が点になったあと、俺は慌てて首を縦に振った。
「や、やや、やるっす!そうします、バスケ部ならいいっす!」
「お、おう……?わ、分かった」
かなり食い付き気味に言う俺に、部長は険しい顔をしながら俺から二メートルほど離れた。
やった。
サッカー部じゃなけりゃ、何部でもいい!
やったぁ!!
これでユズタケにいびられずに済む!!!
ひゃっほい!!
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