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それでも、父親たちが男同士のカップルだとわかってもグレたりしなかったのは、もともと自分がなんでも達観してしまうちょっと冷めた性格だと言うのもあるけれど、やっぱり父がいつもオレのことを一番に考えてくれているのがわかっていたからだと思う。
それはずっと変わらなかった。父はもちろん、信もそういった覚悟を持って父とつきあってきたことを最近知った。
大学は北海道だから、気軽には帰れない。
父は健康でまだ若い働き盛りだが、ずっとふたりきりで暮らしてきた。
両親の離婚後、別居している母とも関係はわりと良くて定期的に会っていたが、やはり日々の生活は父とべったりだった。
自分がいなくなって、ひとりのマンションに帰り、気が抜けたようになる父はみたくなかった。考えたくはないけれど、そんな様子が容易に想像できたのだ。
オレの為に、一時期はダブルワークまでしていたくらいだから、子供の為と思ったらどんなことも厭わないのだろう。だが、自分の為となると本当に動けない人だった。だから心配なのだ。
大学が決まってすぐ、信を訪ねた。父と一緒に暮らして欲しかったから。
自分たちのことがオレにバレていると知って、信はかなり驚いていたが、事情を話すと快諾してくれた。むしろ、そんな風に後押しをしてくれて感謝しているとまで言われてしまった。
「お前……知ってたんだな」
信から事情を聞いて、父も驚いていた。ふたりの暢気さには呆れてしまい、怒りなどわかずに笑ってしまう。多感な年ごろに、そんなの気付かないわけないじゃないか……。
「父さん、これからは自分の為に楽しんで生きてね」
「おまえ……」
「まあ、金銭面ではもう少し、お世話にならなくちゃだけど、オレもバイトをして少しでも生活費にするから」
「金のことは心配するな。バイトをするなとは言わないが、学業を一番に考えなきゃダメだぞ」
「それはわかってる」
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