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父とオレの引っ越しは同日に行った。信も一人暮らしだから家電などは二世帯分あって、分けてもらえないこともなかったのだが、遠方なので輸送・引っ越し代の方がかさんでしまうのと、両家とも長年使用している家電だったので、結局向こうでそろえることになった。なのでオレはコンテナ仕様の単身パックですぐに終わってしまう量だ。問題はこのふたりの新居分……。
引っ越しの一週間前になっても、どちらの家の物を残すのか、捨てるもの、新しく買うもの、ふたりは全然話がついていないようで、途方に暮れていた。
ふたりとも仕事はバリバリとこなしているのに、プライベートだとのんびりモードなのだ。ちょっと生活に支障が出るくらい。
まあ、こういう時になってもケンカにならないのがふたりのいいところなんだけど、あまりにもひどすぎる。
結局オレが両方の持ち物を見比べて、残すもの、処分するもの、リサイクル店に売りに出すものの手配をした。
すっきりとした自分のうちと信のうちを見て達成感が湧く。後ろから信の感心した声が聞こえる。
「裕太って、ほんとすごいねー」
「そんなこと……普通だよ、これくらい」
自分でも確かにしてやった感はある。
それに褒められて悪い気はしないので、ちょっとニヤけて信を振り返ると、目がハートになっていた。でも見ているのはオレじゃなくて父だ。
「やっぱり、道さんの育て方が上手なんだね。裕太ってほんといい子だし、出来る子で……完璧だよ」
「そうか?」
…………おいおい、褒めんなら直接オレを褒めてくれよ。こんな近くにいるんだから。
オレにバレたとわかってから、あからさまないちゃいちゃはさすがにしないものの、ふたりは変に隠すのを止めたようだ。それはいいのだが、たまに置いてきぼり感が半端ない時がある。ふたりはこんなに長く付き合っているのに、今でも…………ラブラブだ。
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