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ゆうきはさっきからずっと大事そうに持っていた紙袋から、小さなブーケと、メッセージカードと、お手製だという焼き菓子を出してくれた。ものすごくかわいくラッピングしてある。
「あ、ありがとう……」
「ひろくん、あっちに行ってもまた連絡してもいい?」
「おう……いいけど」
「……よかった!」
ゆうきはぱあっと顔を輝かせると抱きついてきた。ものすごい厚底の編み上げブーツを履いているから、オレと背の高さがあまり変わらないゆうきに飛びつかれると、ちょっとよろけそうになる。
ハンカチを差し出すと、ゆうきはパチパチと瞬きをして、それから真っ赤になった。
「…………ありがとう」
「じゃあ元気でな、ゆうき」
「ひろくんもね」
ゆうきは涙を拭うと、来たときと同じように恥ずかしそうにして、帰って行った。
途中、何度も何度も振り返っては手を振るゆうきを見て、父たちふたりがニヤニヤしている。
「……裕太も隅に置けないね」
「ちょっと背が高いけど、結構かわいい女の子じゃないか、ゆうきちゃん」
「は……? 父さん何言ってるの」
「ん……?」
え? まさか気付いてなかったのか、このふたり。
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