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「ゆうきはあれ、男の娘だよ」
「ええーーっ!!」
本気で驚いているから、こっちがびっくりだよ。うちの高校は私服だし、進学校だけど校風が自由だったからゆうきみたいな子は結構いる。
「だってさ、すごいおしとやかな子で。食べる姿とか、超女の子だったよね」
「声だってちょっとハスキー位で全然違和感なかったし……」
「だーかーらー、女の子よりも女らしくて可憐なのが、男の娘だろ」
「へえーー」
ふたりはずっと感心していた。まあ、ホンモノを見たことがなかったらそんな反応なのかもな、と思った。
だいたい、ゆうきがそういう子だから、父たちは食事に誘ったのだと思っていたのに。やっぱりあのふたりは暢気だ。
「ゆうきちゃん、裕太のこと好きなのかな」
「多分、そういうんじゃないと思うよ」
たしかに、ゆうきにはすごく好かれている自覚はあるけれど、それは父や信のそれとは違う気がする。もっと、羨望の眼差しっていうか、ファン目線……?
あ、自分で言っといてちょっと恥ずかしくなってきた。うぬぼれの酷い、痛い人みたいじゃないか、オレ。
「そうなの?」
「一年の時、ゆうきがああいう恰好をしているから、クラスの男にからかわれてたことがあったんだ。それの仲裁に入ったっていうか……」
「すごいじゃん裕太。そういうのってなかなかできないよ」
「だって、ゆうきはそれで誰かに迷惑かけたわけじゃないじゃん? だから堂々としてろって言ったんだよ」
「ふーん、そんなことがあったんだね」
今、男の娘、または男の娘になりたい子にとって、俺の母校がちょっとした登竜門みたいになってるのは、間違いなくゆうきの存在があるからだ。
自分で言うものなんだが、かなりな進学校なので、あそこに合格したら女装を許可するという親も少なくないらしい。道を切り開く人がいるから、そこに繋がる人もいる。
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