親子

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 今週のフムフムは本当に忙しい。今までにない客の流れらしく、店長も首をかしげている。  でも、うれしい悲鳴のようで、今月は売り上げの心配をしなくていいのか上機嫌だ。  金曜日の夜、どことなくうきうきした空気はこのネットカフェの中にも充満していた。今はこの忙しさが心地いい。  でも忙しさのあまり、道が勤務中の時間に休憩に入ることができなかった。これで、来週まではきっと会えない。    怒涛のフライデーナイトが終わり、うちについてやっと眠れると部屋に行こうとしたそのとき、母親につかまった。  嫌な予感は的中した。近所に月に二回、土曜しか開いていないシフォンケーキの店があるとかで、それを買ってこいということだった。  自分で行けばいいのにと渋々うちを出たが、実は結構シフォンケーキが好きだったりするので興味もあった。  店はこの辺りでは比較的新しい住宅街の中にあり、テイクアウト専門で住居の一角を店舗にしているようだった。  開店直後のわりにはぽつぽつと人が訪れている。シフォンケーキ自体は小ぶりなものが袋詰めされていて、フレーバーごとに並んでいた。クリームが付いている物は冷蔵庫に並んでいたが、種類は少なかった。  クリームより、生地で勝負しているシフォンケーキこそ、俺の好みだったのでテンションが上がる。  プレーン、メープル、いちごなどの王道にはじまり、抹茶、ミルクティー、ごま、季節限定でヨモギなんていうのもあり、ついつい買いすぎてしまった。  思わぬ収穫でごきげんになった俺は、帰り道足取りも軽くなり天気もいいので、外でシフォンケーキをつまんでから帰ろうと、自販機でコーヒーを買って飲みながら公園に向かった。そこにはぴー太を遊ばせてる道がいた。  心臓がトクンと跳ねる。
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