みちのしたひろたって、語呂が悪いですよね。

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「それにしてもプレゼント、すごくかわいいね。ゆうきちゃん、女子力高い!」  フラワーアレンジメントとお菓子作りはゆうきの特技だ。  それにいつも着ているフリフリの洋服は自作だし、文化祭の時にみんなにまかないを作ってくれたから、料理が上手なことも知っている。メイクだっていつも完璧だ。  こうやって振り返るとゆうきのスペック、半端ねえな。オレも負けないようにしないと……。 「あ、そうだ。オレからもふたりにプレゼントがあるんだ」  少し前に単発バイトを詰め込んでいた。少しでもお金はあった方がいいと思ったのと、コレを渡すため。  色違いで揃いのマグカップ。 「わあ! マグカップだ。しかもこれ、結構高いんじゃない?」  そうそう、北欧系の人気ブランドだからな。 「裕太、ありがとう。大切に使うね……み、ちさん……?」  あれ、父さん泣いちゃった……。なんか自分の父ながら結構クールで格好いいと思っていたけれど、この頃は涙もろいところとか、普通にオヤジくさいところとか、あるんだよな。  でもその辺にしといたほうがいいよ。信までつられちゃうと、この人……一度泣くと長いから。  でも、これくらいのことでほろっとしちゃうくらいだから、やっぱり信と一緒に暮らしてもらえてよかった。オヤジだけど、まだまだ若いし、抜け殻みたいになって欲しくないからな。  父や信、ゆうきみたいな人は、世間でいうところの少数になるんだろう。そういう人が身近いるせいか、オレはよく考えることがある。  そういう人たちが、変に力みすぎたり、卑屈になったりせず、もっと自然に生きていける世の中になればいいのになと思う。  まあ、こんな偉そうなことを言っておいて、大学生活にも慣れた頃、彼女と抱き合って眠っているところを、サプライズで下宿先のアパートを訪れた父と信に見られてしまい、ひと悶着あったりするのは、まだオレも知らないちょっと先の話だ。 ★みちのしたひろたって、語呂が悪いですよね――END★
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