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「道さんは、昼も仕事されてるんですか?」
「当たり前だろう。そうじゃなきゃ生活できないよ。コンビニは副業だ」
「でも、ダブルワークとか、大変じゃないですか?」
「おっさんなのに、とか思ってるんだろ」
「そっ、そんなこと思ってないですよ」
「ぴー太を一人で育てることになった時、今までの仕事は当然厳しくなるだろうと思って、会社を辞めようとしたんだ。そんな俺を、ぴー太が大きくなるまでは内勤で働けって社長が言ってくれて……。俺はとても恵まれてる。大変だと思ったことは、ないよ」
そういって微笑んだ道の目はふっと優しくなった。視線の先にはぴー太がいる。
親は子供の為のことだったら、苦労って思わないものだよって、いつか母親も言ってた。
俺、惚けたようになってないだろうか。初めはただ、同性に言うのもなんだけど、ものすごい顔が好みでその……一目惚れした訳だが、今は道のこと知る度にもっと惹かれていく。
「なんか、余計なことまでしゃべっちゃったな。あんまりこういう話を人にしたことなかったんだけど」
「そんな。道さんのこといろいろ聞けてうれしかったです」
うれしいだなんて、何を言ってるんだ俺は。
なんだか胸がいっぱいになってしまい、いてもたってもいられなくなった。
俺はぴー太の所に走って行き、無心に砂を掘り進め見事な山を作ってしまった。
大作をつくったら、ちょっと落ち着いたので道のベンチに戻り、すっかり冷めてしまった缶コーヒーを飲んで、袋の一番上にあったシフォンケーキを取り出して食べる。
「うまっ。あ……んぐ……ごほっ」
「あはは、大丈夫?」
恥ずかしい。俺あの砂場から地底に潜って消えてしまいたい。それからどうやってうちに帰ってきたかあんまり覚えてなかった。
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