新人くん

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 フムフムに新しくバイトの子が入った。新人が入ること自体はそうめずらしいことではないのだが今回は特別だ。  その男、野中は俺の四つ下で一浪している大学二年生。  ものすごい背が高くて店の入り口も屈まないと通れないらしい。  本人は面倒に感じてそうだけど、平均身長ぎりぎりの俺からしたら、うらやましくて仕方ない。  何か運動をしていたのか、細身なのに肩幅が広くてがっしりしている。  ちょっとウェーブのかかった黒髪で少し長めなのだが、それが奴の整った顔に合っている。  ここまで完璧だと妬む隙もなくて、なんか笑ってしまう。  大げさではなく、野中がいると薄暗いネットカフェフムフムの店内が草原になるかのようだった。  爽やかな風を運んで来た野中を見て、店長が言った。 「掃き溜めに鶴だな」  うん、俺も今同じこと思ってました。  特別だというのは、そんな野中の教育係になんと俺が任命されたからだ。  今までだったら絶対お断りって思っただろうけど、今は店長が自分を認めてくれたことが素直にうれしい。  野中は仕事の飲み込みが早く、一聞いて十を知るみたいな奴だったから、初めての教育係は特に苦労も無くスムーズに進んでいた。  野中の動きはきびきびして無駄がない。  客の呼び出しには進んで応対するし、レジをやらせれば明るい接客でネットカフェにはめずらしい感じだったけど、だからといって店の雰囲気から浮くような感じではなく、とにかくバランスが良くてムカつくくらい爽やかだった。  そして長身でイケメンとあれば、どうしたって目立つ。女の客の中にはあからさまに色目をつかって、声をかけてくる奴もいたけど、野中はなんだかそういうことに興味がないのか穏やかに、でもきっぱりと断っていた。  野中に仕事を教えていくうち、慣れていた仕事を自分でも再確認できたのでこの経験はすごく為になった。
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