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「いないよ。そんな余裕なかった」
「……俺、道さんのことが好きです」
いろんな告白のパターンを想像していたのに結局ひねりのない直球で気持ちをぶつけてしまった。ただまっすぐ道を見つめることしか出来ない。
予想どおり道は戸惑って困っているような顔をしていた。男に好きだなんていわれて困らないわけがない。
「すみません。言ってしまったら道さんが困るんだろうなと思いながらも言わずにいられませんでした……」
わかりきった次の言葉を聞くまでがとても長く感じる。
「信くんの気持ちに応えることは出来ない。ごめん」
断られ方は想像していたよりもソフトだった。気持ち悪いって罵倒されることも想像のひとつだったのに。
「そう、ですよね。わかっていました。気持ちだけ伝えたかったんです。聞いてくれてありがとうございます。じゃあ俺行きますね」
はじめからこの恋が成就するなんて露ほども期待していないから大丈夫だ。ただ、気持ちを伝えたかっただけ。
公園を出ようと砂場の脇を通ると、先程作ったお城の端が少し崩れたとぴー太が泣きそうになって言うので補正をしていたら雨粒が落ちてきた。
「ぴー太、雨が降って来ちゃったから帰ろうね。お父さんが呼んでいるよ」
「やだ、お城が直ってないよ」
「でも雨だから仕方ないよ」
「また今度ね」とは嘘になるから言えない。
傘を広げながら道がこちらに近づいてきたので、俺はぴー太をなだめて公園を出ようとした。それなのにぴー太は俺のTシャツの端を握って離さない。
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