気持ち

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「ぴー太、信くんが困っているだろう。離しなさい」 「やだ、もっとしんくんと遊びたい」 「雨が降ってきたから帰らないといけないよ。あきらめなさい」 「じゃあ、しんくんとおうちで遊ぼう。ね、おうちならいいでしょう?」  今まで遊んであげている時にここまで駄々をこねるぴー太を見たことがなかったので驚いたが、道がこのまま引きずってでも連れて帰るだろうと思っていたのでだまっていた。  しかしなかなかぴー太も強情だった。  雨足はどんどん強くなる。俺もバイト先から拝借した長らく持ち主が取りに来なかったビニール傘を広げた。最悪だ、少し穴が開いている。  相変わらずぴー太はシャツの端を握ったままなので動くこともできない。 「信くん、ごめん。ぴー太は普段ここまで強情をはらないんだけど……このままじゃびしょ濡れになってもきかないだろうから少しだけうちに来てもらえる?」 「えっ?」  何言っているんですか? と困って道の顔をみると、俺よりさらに困った顔をしていた。  そりゃあ、振った相手にうちに来てくれなんて言うとは夢にも思わなかっただろうけど、自分で言っておいてそんな顔をするのはやめて欲しい。  俺はうなずいた。ヤケクソだった。  本当は俺がここで引くべきだし、道もそれを望んでいるのだろう。でも道の思惑が通りにするのが悔しかった。  だったら俺も馬鹿のフリをしてやろうと思った。  ぴー太は無邪気に喜んで、今度は早く帰ろうと道と俺を急かした。 俺はといえば、道がどんな顔をしているかを見たら立ち直れなくなりそうだったから極力見ないよう下を向いて歩いた。
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