気持ち

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 道の住んでいるアパートは公園から歩いて10分位のところにあった。うちともわりと近い場所だ。  中に入るとタオルを手渡してくれた。気付かなかったけど、穴あき傘のせいで髪がかなり濡れていた。  道はぴー太に服を脱ぐようにいってから、手早く体を拭いて着替えさせていた。  小さい子をそのように世話するのは容易なことじゃないんだろうに、部屋の中もきれいに保っていて感心してしまう。比べるのが失礼だが俺の部屋のほうがよっぽどちらかっていた。 「お昼作っちゃうから残り物で悪いけど食べていって。狭いけどそっちで適当にくつろいでね」  道はエプロンをつけて冷蔵庫を開けたりお湯を沸かしたりして忙しそうに動き出した。 「しんくん、トランプしよう」  ぴー太は目をきらきらさせながらトランプを並べ始めた。神経衰弱をはじめたがぴー太は結構強い。  一応傷心で集中力がない自分は何度やっても勝てなくて、しまいには笑ってしまった。 「しんくん、どうしたの?」 「いや、なんでもないよ。ぴー太は強いね」  ご飯が出来上がったと道の声がして、キッチンへ移動した。オムライスとスープとサラダが用意されていた。ぴー太のものは小さくてかわいい。 「おとうさん、ぴー太って書いて」  ぴー太はオムライスにケチャップで名前を書いてもらいご満悦だ。道はぴー太の食べこぼしを拾ったり、姿勢を注意したりしながらその合間合間に自分の口にオムライスを運んでいた。  これがこの親子の日常なんだろう。道が作ってくれたオムライスはとても美味しくて、今はただ余計なことを考えずに好きな人が作ってくれた料理を食べられた幸せをかみしめることにした。  食後、食べっぱなしはさすがに悪いので、片付けのときにお皿拭きを手伝った。ぴー太はご飯を食べたら驚くほどの速さで眠ってしまった。
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