報われなくても

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 ぴー太のお迎えを道に頼まれて向かった待ち合わせ場所まではすぐ着いた。  道は電話をしていて、様子からすると保育園に連絡を入れているようだった。 「今保育園には電話を入れておいたから。多分血縁者じゃないから身分証明書とかを出せって言われるかもしれないけど安全の為だから気分を悪くしないでくれ。もし何かあったらすぐに連絡して」 「わかりました。じゃあいってきます」  道はぴー太を迎えに帰る途中、会社の若い子から事務所の鍵を無くしてしまったと連絡が入ったそうだ。  事務所には設備に使用する資材があり中には使用法を間違えると大変な危険物も扱っている。  運が悪いことに無くした鍵には社名がばっちり入ったキーホルダーが付いていた為、防犯上鍵を交換する必要があるらしい。  道から保育園の場所を聞き、子供乗せ自転車を借りて走り出した。  保育園に着くと何人かのママさんたちがそれぞれ子供たちをお迎えに来ていた。  俺はイレギュラーなお迎えってことで言われたとおり、インターフォンを鳴らして事情を説明した。 ところがインターフォンの向こうの声が困惑している。 「どうかしましたか?」 「いえ、今日裕太くんのお迎えがパパさんじゃないって連絡を受けていないんですよ。」 「えっ? 道ノ下さんが連絡を入れているところ、さっき俺も横で聞いていたんですが……でもここでそれを言っても仕方ないですよね。今連絡を入れてみます」 「申し訳ありません。連絡がつくならそうしていただけますでしょうか」  園長だと名乗ったやさしそうな年配の女性は申し訳なさそうに言った。
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