報われなくても

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 道がお迎えにいけないから俺に頼んでくれたのにこれでは意味がないではないかと思いながらも、子供を預かる園も安全確認をしないうちは子供の引渡しが出来ないこともわかるので仕方ない。  道に電話をかけ事情を説明するとすぐに向かうとのことだった。  しばらくして道がやってくる。 「なんか、お役に立つどころか、逆に手間をかけちゃってすみません」 「いや、信くんのせいじゃないよ。こんなことになってこちらこそ悪かったね。会社の鍵を開けてきたから、とりあえずは大丈夫だから」  道の姿をみつけると、園長先生は先程よりもさらに申し訳なさそうな顔をしていた。  そして道に事務所へ来てもらえないかと遠慮がちに言った。 「信くん、ごめん。また改めて連絡するから戻っててもらえる?」 「俺はここで待っています」  こんな状況で帰れといわれてもまったく帰るつもりはなかった。  道も状況がつかめなくて多少不安に思ってるのか、それ以上は強く言わずに園の中へ入ろうとした。 「それでしたら、道ノ下さんのほうで差し支えなければ、そちら様も一緒に中に入りませんか? 今はお迎えのピークなので外で待っていても目立ちますから」  たしかに得体の知れない男が保育園の前にずっといるのも気持ちのいいものではないだろう。  園長先生がそう言うので、どうしたもんかと道をみると軽くうなずいたので、ついていくことにした。
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