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「道さん、仕事抜け出したって言ってましたよね。バイトまで時間もあるし、それまでうちでぴー太を預かりますよ」
「ただでさえ面倒に巻き込んでしまった上にこれ以上迷惑はかけられないよ」
「何言っているんですか、ここまできたらもうなんでもありじゃないですか。ぴー太、俺んち来る? おしゃべりなおばちゃんしかいないけど」
わざと軽く言ってしまうのは他意がないとはいえ、道の弱みに付け込んでいると思われたら嫌だなと思うあざとい心からだった。
「うん、いきたーい。おとうさんいってもいいでしょう?」
「じゃあ、後はそれほどかからないで終わるとは思うから、お願いしてもいいか?」
「まかせてください」
俺はうちに電話をして事情を簡単に説明し、ぴー太と共に帰った。
母親はかわいい訪問者に大層喜んで大変だった。
三人でご飯を食べて、俺は仕事前にシャワーを浴びようとするとぴー太が一緒に入りたいというのでなんだか照れくさいながらも風呂に入れてあげる。
その頼りない細い首に乗っかる小さい頭を洗ってあげていると守らなきゃいけない存在があるから道はあんなに頑張れるんだなと思った。
風呂から上がると母親はどこにしまっていたのか、小さい頃の俺の洋服を出してきていた。
そんな長らくしまっていたものをぴー太に着せることに抵抗があったが、がさつな母親がしまっていたとは思えないほど状態はよかった。もちろんファ○リーズすることは忘れなかったけど。
母親は着替えたぴー太を見てあんたの子供の頃を思い出すなどどいってすっかりご機嫌だった。
そろそろバイトに行く時間という頃、道から電話がかかってきて、しばらくするとインターフォンが鳴る。
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