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ことの始まりはバイト帰りのコンビニ。
夜間を中心にネットカフェ「フムフム」で働く俺は、
休憩やバイト上がりに隣にあるコンビニに行くのが日課だった。
昼間は少しだけ暖かくなったけれども、相変わらず夜は凍える程寒い。だからつい、夜中でも明るい光が漏れているこのコンビニに寄り、飲み物や食べ物、くだらないもまでつい買ってしまう。
その日もいつものように左手でさっとカゴを持ち、レジの前を通って弁当コーナーへ行こうとした。
深夜24時、店内はレジにいる客の他には誰もいない。ふと、レジの男性が目に入ってきた。
見かけない顔だったけど、深夜の顔ぶれは結構変わる。
年齢は三十代半ばくらいだろうか。ちょっと重そうな黒い髪を斜めに流したスタイルで、コンビニの制服は襟元の一番上まできっちりと閉めているのに首が長いせいか苦しそうには見えない。
背はかなりの長身。だがそれを隠すかのように少し背中を丸め気味にして、淡々とバーコードを打っている。
俺が惹きつけられてしまったのはその目元。涼しげな切れ長の目元に黒い瞳が印象的だった。
こんなところに随分格好いい人がいるもんだなと思いながら店内を回った。
もう散々通いまくっているこのコンビニには目を瞑ってでも歩ける自信がある。だからちょっとでも変わった新しいものがあるとすぐ目に入ってくるのだ。
いい年をして甘いものに目がない俺は早速お菓子コーナーで新商品のチョコレートを見つけた。
そういえば人気絶頂のアイドルグループの中でも一番メディアへの露出度が高い子が一人でこのチョコレートのCMに出ていたことを思いだす。グループで一番最年少だが芸能界はそういう下克上は当たり前なんだろう。
そんなことを考えながらチョコレートを手に取ったものだから、思った以上に棚に商品が詰め込んであったことに気付かず、雪崩を起こしてしまった。
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