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道はこちらが恐縮するくらい丁寧に何度も母親にお礼を言った。続いて出かけようとする俺の腕を母親が引っ張る。
「ぴー太くんのお父さん、ものすごいイケメンさんじゃない。背も高くてほんとにかっこいいわねえ。お母さん緊張しちゃったわよ。あれじゃあ、ママさん達が放っておかないだろうね」
今日の出来事はもちろん知らないのだが、結構鋭いことを言ってくる。おかんセンサーって侮れないよな。
そんなことを思いながら外に出て道達と合流する。
「今日はホントに助かったよ。なんかいつも信くんには助けられてるな」
「いえ、自分がしたかっただけですから気にしないでください」
「そういえばこれ……」
自転車に座らせた途端、眠ってしまったぴー太の服を指差した。
「あ、あっ、ごめんなさい。俺の子供の頃の服なんですけど、ぴー太を風呂に入れた後、母親が着せたいってきかなくて……古いモンなんで帰ったらすぐ着替えさせて捨てちゃってください」
「やっぱり信くんのなんだね。そうかなとは思ったけど、あまりにキレイなんで驚いたよ。ぴー太のこと、風呂も入れてくれたのか。眠っちゃったら起こすのが大変だから入れてもらえて助かったよ」
「母親はぴー太が来て、ものすごい喜んじゃって大変だったんですよ。またいつでも連れてきてください。じゃ、俺こっちなんで。おやすみなさい」
「バイト頑張って。いってらっしゃい」
道達と別れてバイト先へ向かう途中、夜空を見上げた。
思いは遂げられなかったけれど、こんな風にいつまでもいられたら幸せだなと思っていた。
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