頼まれたい

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 金曜の夜、俺はめずらしく二十四時前に仕事をあがれた。  夏休みに入った大学生が勤務時間を増やしたいみたいだったから、近頃ハードになっていたシフトを少し交代してもらった。  次の勤務は明日の深夜からだ。予定外に思わず空いた時間が少しうれしくてなんとなく足取りも軽くなった。そういえば少し前までは空き時間なんてうれしくないくらいだらけた生活だったことを思い出して、笑えた。  そうすると思い出すのはやっぱり道のことだ……会いたい。  そう思ったらいてもたってもいられないくて、逸る気持ちを抑えきれないまま、やっぱりコンビニへ向かってしまった。  いつものように道はレジにいた。 「道さん、こんばんは」 「こんばんは。いらっしゃいませ」 「お疲れ様です。もうすぐ上がりですね」 「ううん。交代だったはずの子が来なくなっちゃって、多分朝まで仕事」 「大変ですね。ぴー太は留守番ですか?」 「そうだね」  こころなしか、道さんの顔が暗く見える。 「なんかありましたか……大丈夫ですか?」 「別になにもないよ」 「でも、そんな風には見えないですよ。話してくださいよ。俺と道さんの仲じゃないですか」 「どんな仲だって言うんだよ」  低い声をいっそう低めて道が言った。 「冗談ですよ。でも本当にどうしたんですか」 「別に、大したことじゃない。めずらしくぴー太が熱を出して寝込んでいるだけだ」 「えっ、大変じゃないですか」 「でもあいつも慣れている」  そんなこと、本当は思ってないくせに。でも、仕事を放るわけにはいかないんだろう。
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