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明け方仕事を上がり、仮眠を取ってから公園に向かう。いつもどおりぴー太は楽しそうに砂場で遊んでいる。
今はタイミングよく、道親子の他には誰もいない。
「おはようございます」
「おはよう。眠くないのか?」
「大丈夫です。今日は特にすることもないし。それより」
道がこちらを見ているのがわかるけど、顔を上げることができない。でも聞かなきゃ。
「あの……俺のこと、どう思ってるんですか? 道さん俺にキ、キスしましたよね」
「それが答えだと思ってるよ。覚悟を決めたからキスした」
「でも、好き……だとは言ってくれないんですね」
「お前はやっぱり、とてつもなくまっすぐなんだな。うらやましいよ」
そういって道は笑った。
「なんか、馬鹿にされているみたい」
年上だから当然なのかもしれないけど、いつも余裕で冷静で俺の必死の思いもはぐらかす。
いつだって惚れた方の立場が弱いんだから。そう思ってもやっぱり悔しい気持ちは晴れなくて道の顔を見ることができず、ぐっと唇を噛む。
「そんな顔するなよ」
困ったような声でそういうと道は俺の手を握った。
二人の間に荷物があってベンチの後ろは木陰だ。そのまま手を繰り寄せると、しっかりした力で握り締めてくる。
驚いたものの拗ねてしまった収まりがつかなくて、真っ赤になりうつむいていると道が覗き込んだ。
あの子供っぽい笑顔で。
「信のこと好きって言ったら、止まらなくなりそうだったから。そんな顔をされたらかわいくてどうにかしてしまいたくなる……俺を見て」
言われた言葉を咀嚼するのに時間がかかり、たっぷりと時間が経ってから顔を上げるといままでに見たことがないくらいのやわらかい微笑で俺を見ている道がいた。もう一度強く手を握る。
「信、好きだよ。もう、どうしようもないくらい信のことが好き」
甘く低い声で囁かれた。や、やばい、くらくらしてまた熱がぶり返しそうです。
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