気持ちを知りたい

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 ランチの時間は過ぎていたが、日曜のファミレスは家族連れでにぎわっている。  道が席に座ってからそれほどせずに元妻の千咲が店に入ってきた。  若い頃はモデルにスカウトされたこともある千咲は道と結婚していた時とそう相変わらず、大輪のヒマワリみたいな目を引く大女だ。 「ナリ、久しぶり」 「うん。元気だったか?」 「元気だよ。日本は蒸し暑いね。ぴー太はどう?」 「あいつも元気。随分大きくなったと思うよ」 「そりゃ、そうだろうね。あなたとわたしの子だし。大きくないわけがない」  そういうと千咲は少し笑った。 「あなたが、子育てしながら働いてるなんてね」 「何か、話があって来たんだろう?」 「うん。実は日本に、戻ってくることになったんだ。私」 「そうか」 「本当はここに来るまで、ぴー太を引き取りたいって言うつもりだった。でも、今日のナリの姿を見て諦めたよ」 「どうして?」  それには答えずに千咲はストローの先でソーダの氷を転がしている。そんな、千咲の手元を道はぼんやり見つめていた。 「ナリは本当にいい父親の顔になったね。今までそんな顔見たことなかった。子育て大変だろうに、すごくいい顔をしてるよ。今幸せ?」 「ああ、すごく幸せだよ」 「結局、私にはナリをそんな顔にすることはできなかったな。一方的にナリのことを好きで好きで押しかけて、お嫁さんにまでなったのにね」 「…………」 「そんな顔しないで。もう迫らないから。今は恋人もいるし、安心して」  千咲がいたずらっぽく笑う。 「……これからは近くにいるから、ぴー太に会わせてくれるかな」 「もちろん、会いに来てやってくれ」 「そう、ありがとう!」
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