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「しーんくん?」
道が去った後、引き続き公園でぴー太を遊ばせながらぼーっとしていると、はしゃいで走り回っていたはずのぴー太が、気付くと目の前にいた。
「ん? どうした、ぴー太」
「しんくん、おなか痛いの?」
「うん? 痛くないよ。なんで?」
「イタイイタイの顔してるよ。どこが痛いの」
「うん。ここ、かな」
ポロシャツのボタンのところをギュっとつかむ。
「そっか、イタイのイタイの、とんでけー!」
ぴー太が俺の手の上に小さな手の平をそっと被せてそう言うと、ぱっと離した。
「ありがとう。痛いの、なくなったよ」
ぴー太の頭をガシガシとこねくり回して、抱きしめた。この子はこんなに幼いのに人の気持ちを汲み取れるんだな。
道の想いが聞けてもう何もいらないと思った次の瞬間には違うことで悩み始める。人間は貪欲だ。
少しして約束の時間になったので、ぴー太を連れてファミレスへ向かった。
ちょうど店の外に出てきた道を見つけてぴー太が駆け寄る。
「おとうさーん」
隣にいる人が、千咲さんかな。なんだかヒマワリみたいだ。キレイな人。
道に抱きついていたぴー太が、隣の千咲を見て恥ずかしそうにしている。
「おかあさん……」
「ぴー太、久しぶり。大きくなったね! ご飯たくさん食べてる?」
「うん。たくさん食べてるよ!」
「偉いねぴー太。そうそう、お母さん日本に帰ってくるから、今度また会ってくれるかな?」
「うん」
「そっか、ありがとう。じゃあまたね」
そんなやり取りをまぶしそうに見ていた俺に、千咲さんが近付いてきた。
「ナリ……、貴成さんから、信さんの話は伺っていますよ。いつもぴー太と遊んでくれて、ありがとうございます」
「いっ、いえ……そんな、何もしてないです」
消え入りそうな声しか、出せなかった。このヒマワリには圧倒される……。
「貴成さんのこと、よろしくお願いします」
ヒマワリが体に似合わない小さな声で言った。
「えっ?」
「じゃあ、またね」
千咲さんは大きく手を振って去って行った。
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