気持ちを知りたい

7/8

413人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
「ねぇ、道さん。聞いてもいい?」 「うん?」  ぴー太は目いっぱい遊んだ後、道に会ってから大好きはソフトクリームを買ってもらって、それをものすごい勢いで頬張ったあとは、すっかり眠ってしまった。今は道におぶわれている。 「なんで、千咲さんと別れたの? ……その、言いたくなかったら無理に聞かないけど……」 「そうだね、俺が本当の俺を誰にも……それこそ妻の千咲にも見せられなかったことを、千咲は気付いちゃったんだろうね」 「本当の道さん……」 「高校生の頃、男性と初めて付き合った。高校の先輩だったけど、あまりに自然にその人に惹かれて、その人も俺のことを好きだって言ってくれた。うれしかったよ。それまでずっと、自分は周りの人と違うって小さな疎外感をずっと抱えてきてたから、わかり合える人が出来たことは当時の自分は本当に救われた」  背中に背負ったぴー太が下がってきたので前に抱えるように抱きなおした。俺は道の荷物を持って歩き出した。 「付き合ってることは二人だけの秘密にしていたけど、どこからともなくバレてしまってお互いの両親からは猛反対された。特に先輩のお母さんにはすごい言われようだった。まるでゴキブリでも見るような目で見られて「金輪際息子に近づくな。」って言われた」 「……うん」 「それでも先輩のことを信じていたけれど、やっぱりそんな状況に立ち向かえるほど俺たちは強くなかったんだろうね。程なくして先輩から別れを告げられた。地元にもいづらくなって高校卒業と同時に先輩はどこかへ行ってしまったし、俺も大学進学と同時にうちをでて、それからはほとんど戻っていない」  自分と同じような思いを道もしていたなんて。いや、苦しみはきっと俺の比じゃなかっただろう。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

413人が本棚に入れています
本棚に追加