気持ちを知りたい

8/8

413人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
「千咲とは大学時代に知り合った。彼女はすごく明るくて屈託がなくてかわいかった。俺のことが大好きみたいで押されまくって付き合って、結婚した。周囲も喜んでくれてぴー太も生まれて幸せだったし、自分も千咲を大切にしているつもりだった」 「うん」 「でも明るかった千咲がだんだん元気がなくなってきて、ある日聞かれたよ。「ぴー太がいなくなったら悲しいよね」って。もちろん悲しいって俺は答えた。ぴー太を失ったら生きていけないって。「でもわたしを失っても生きて行けるよね。ナリは。」そう言われた。もちろん俺は否定したけど、千咲の目はそれを信じてなかった。それから数日して、千咲は出て行ったんだ」 「……道さん」 「今だったら千咲の気持ちが少しはわかるよ。一番信頼を寄せるはずのパートナーの本音が見えなかったら、愛されていないって感じると思う……そんな感じだよ。長々とごめんな」 「……ううん」 「そんな顔するな。別れた後、しばらく経ってから千咲とは沢山話をして、沢山謝った。今は俺たちの中では消化された話でもう大丈夫だから」  そういった道の顔は本当に吹っ切れているのかさっぱりした様子だった。 「来週の土曜は時間ある?」 「バイトは夜からだから、空いてますよ」 「二人で会わないか? 早速ぴー太を千咲の所に向かわせることになって。じゃあまた連絡する」
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

413人が本棚に入れています
本棚に追加