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そして約束の土曜日。
俺は朝から会おうって言ったのに、仕事明けでは体が辛いだろうからとお昼に待ち合わせをした。
そのくせ時間が惜しいからと近所のレストランで食事をする。なんだか道の真意が測れない。
「この後どうしますか?」
「俺のうちに行くよ。なぜならこの後お前を抱くから」
「えっ? ごほっ……」
思い切り大きめに巻いたパスタを口に入れたところだったので、むせてしまい目が白黒となった。
「信、何をそんなに驚いてるの?」
「あ、あ……当たり前じゃないですか。いきなりお前を抱くって言われて驚かない奴がいますか!」
「あれ? これでも俺、今まで自制してきたつもりなんだけどな。俺達には時間が限られてるからね、さあ食べたらさっさと行くよ!」
なんか急展開過ぎて付いていけない……。そそくさとレストランを出る道の後を慌てて追いかけてアパートに行った。
手を引いてぐいぐい部屋の奥に行こうとする道を止める。
「なんで、そんなに急ぐんですか?」
「まだそんなこと言うの? まさかここまで来て嫌なの?」
「そうじゃないです。ただちょっと驚いてるだけ。道さんはその……恋愛に臆病になっていたんだと思っていたので」
くるっと振り向いた道は心外そうな顔をしている。
「恋愛に臆病になっていた俺の心の扉をこじ開けてきたのはお前だろう? それもかなり無理やり。だから責任をとれ」
そういわれると返す言葉もないです。……この人に火を付けちゃったのは俺だ。
つかんだ手を引き寄せられ、抱きしめられる。耳元に熱い吐息がかかる。
「ねえ信。俺が今どれだけお前のことを愛しいと思ってるかわかる? もう待てないよ」
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