決意

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 今回のことで人生は何があるかわからないと痛感した。  一歩間違えたら大怪我をして動けなくなったり、死んだりしてたかもしれなかったんだ。人生は自分が望まなくても一瞬で変わってしまうこともある。  それがきっかけってわけじゃないし、前々から考えていたことだけど、俺はひとつの決心をした。  それは就職をして早く一人前になること。年齢的にも遅すぎるくらいの決心だけど。  勤務時間が減ったことで余った時間は、就職活動に充てた。正直まだなにがしたいかなんてわからない。でも求人誌、ハローワークと手当たり次第探して、少しでもピンと来たところにはすべて履歴書を送った。  面接までこぎつけた数社のうちのひとつに営業職を募集しているladybirdという会社があった。  結論からいうとここの社長の天道の言葉に感銘してなんとかここで働きたいと、夢中で面接を受け続けるうちに最後の一人になり、採用された。  ladybirdは化粧品や食品の容器をOEMで製造する会社で工場の規模や社員の数は小規模だが、精度や安全性の高い日本製の容器であることと、小ロットから製造できるため、クライアントの要望にきめ細やかに対応や提案できることが強みだ。  主なクライアントはOEMを行っている化粧品会社だが、そのほかにも確固たるコンセプトを持つ有名アパレルブランドの化粧品部門や、大手食品会社でそのかわいらしい入れ物のの形から大ヒットしたあるキャンディーの製造などを行っていて確実な実績を持つ会社だった。  そんな手堅い経営のladybirdは社員の入れ代わりがほとんどなく、求人を出したのは数年ぶりだったと後から聞かされた。倍率もかなり高かったそうだ。  社長の天道はちょっと変わった人で学歴や職歴よりも人物を重視して採用を検討していたようだった。  少数精鋭の会社の為、各部署との連携をうまく取れる人であり、クライアントの要望を十分に聞いて理解し、的確に社内に伝えられるような人材を探していたらしい。  面接は社長自ら五回行われ、最終まで残っていることを不思議に思いながらもこのチャンスを逃したくないと挑み続けた。  フリーター上がりの自分がなぜ最後の一人に選ばれたのかはわからないけれど、変わり者の社長だったからここまで来れたのだと思った。
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