距離を縮める

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 彼を見かけてからは、今まで以上にコンビニに通いつめた。  不審に思われないようにネットカフェのエプロンをわざとしたままにして、思い切って話しかけた。  名前は道ノ下貴成。歳は33歳ということ。どうにかそれだけわかった。  その後もコンビニに行く度に一言二言何とか話して少しずつ情報を増やしていく。  道は平日の夜、店にいることが多いみたいだ。俺が話しかけると、にこやかというには程遠い、ほとんど無表情での応対だったけれど、不思議と邪魔そうにはされなかった。  初めて「道さん」と呼んだときは不思議そうにチラッとこちらを見たので、慌てて「道ノ下さんて、長くて呼びづらいから、道さんでいいですか?」といったときも、「好きにすれば」と言っただけだった。  今思えば、邪魔以前に俺に興味が無かったんだと思う。  そんな感じで日に日に暖かくなる気温と一緒に俺の独りよがりな気持ちも上昇していった。
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