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「んんっ?」
「道ノ下さんから聞きました。二人は付き合ってるんですよね」
「う、ん……」
「俺が早く……」
「ん?」
「俺の方が早く信さんに会って迫ってたら変わってたのかな?」
「え? 野中なんか勘違いしてるかも。迫ったのは俺だよ」
「え、そっ、そうなんですか? 俺はてっきり道ノ下さんに手篭めにされたのかと思ってました……」
「手篭めって……でももう、嫌だったんだ。消極的で受身で人のせいにばっかりする自分が。だから変わりたかった。駄目でも道さんには向かっていきたかったんだ。だからストーカー並のしつこさで道さんを手に入れた」
突然、野中が笑い出した。
「ごめんなさい……俺的にはかなり覚悟を決めて信さんに告白したつもりだったんですけど、二人の間に入る隙間なんてないですね」
やばい俺、真摯に答えようとするあまり、惚気てたよね。仮にも自分を好きだといってくれた野中に。
野中がふっと笑った。
「道ノ下さんに言われました。あの時、信の命を守ってくれたことは本当に感謝してる。だけど信は渡せないし、信も君のところへは行かないと思うって」
そういうと野中は両手で顔を押さえ屈んでしまった。
「……信さん、先に行っててください。俺もあとですぐ行きますから」
「うん」
俺が今野中にしてあげられることはない。静かに公園から去った。
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