413人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
土曜日。
千咲さんがぴー太に会いに来ている日、俺たちは道さんの部屋で過ごしている。
「いよいよ信も就職するんだな」
「うん」
「俺もね、コンビニは辞めることになった」
「そうなんですか?」
「千咲が養育費を払うって引かないんだ。その代わりコンビニは辞めてぴー太と一緒の時間を増やしてあげてって言われて」
「それは、すごくいいと思います、ぴー太の為にも。よかったね道さん」
こうやって二人の間も変わっていく。いい変化のはずなのに少しだけ怖い。
そして俺はこの間からのことで道に聞きたいことがあるのに言い出せないでいる。どうしても道を見つめる目が探るようになってしまう。
「信、どうした」
「う、うん。別に何もないけど」
「何かあるからさっきからそんな顔で俺のことみてるんだろ?」
「うん……そう、だけど」
「なんだよ」
「道さん、野中と会ったの? ……やっぱりそう来たかって顔してますね」
「この間あいつが俺に会いに来た」
道はあまり驚いた様子はない。俺がそのことを言いだすこともわかっていたみたいだ。
「聞きたかったのはそれだけ? あいつお前を好きだって言った?」
「う……ん。道さんは怒んないの?」
「信に対して? それともあいつに?」
「どちらも」
「あいつが信を好きなのは前から気付いてた。あの時お前を助けたのもあいつだったことにすごく嫉妬した。信を助けたのがなんで俺じゃなかったんだって」
「それは……仕方なかったことです」
「わかってる。あいつが捨て身で信を守ってくれたからこそ、信が今無事でいられることも事実だ」
最初のコメントを投稿しよう!