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◇◇◇
「ただいま」
「おとーさん、おかえりなさい」
「じゃ、お疲れ。今日は助かったよ」
「お疲れ、気をつけてな」
小池さんは、朝見た時と同じような豪快な爽やかさで去って行った。
ぴー太は小池さんにお土産のプリンを貰ってご機嫌で部屋へ入って行く。そんなぴー太を愛しげに眺めながら、道が流しで手を洗っている。
「ほんと、今日はありがとうな」
「いえ、じゃあ俺はこれで」
俺は荷物を取り、靴を履こうとした。
「もう、帰っちゃうのか?」
「帰りたくないけど、ぴー太とはしゃぎ過ぎちゃって少し疲れちゃったんで今日は帰ります。さっき急に明日出勤も決まっちゃって。じゃあ……」
――嘘。
本当は朝、同じ作業着を着て並んでいる二人を見たときから心がざわついて、不安が止まらない俺を見られたくなかった。
そう思って背を向けたとき、信と呼ぶ道の声が聞こえた気がしたが、振り向かずにアパートを出た。
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