魔法の手

突然だが、俺は左利きだ。

器用だのかっこいいだの色々言われるけど、実際はそんないいもんじゃない。

まず、世の中のものは大抵右利きを基準にして作られているから使いづらい。ドア然り、ハサミ然り。

特に嫌なのは、黒板の内容をノートに書き写す時だ。手の横が真っ黒になって、いつもげんなりする。そうならないのは縦書きの国語系だけ。ああでも、習字は例外。

は？頭がいい？『可もなく不可もなし』を抜けられた事ないっつーの。

大体、感覚的には右利きが右手を使っているのと変わらない。なのに、ちょっとした特殊能力扱いされる。

気持ち悪い、なんて言われた事もあったな。笑って流したけど、あれは結構痛かった。

言葉は、何気なく発したものでも、簡単に刃となって心を抉るから、怖い。

「魔法みたい」

そんな中、目をまん丸くしてそう言った彼女の言葉は、なかなかの衝撃だった。