魔法の手

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「一一あ、千里(ちさと)?急に悪い。……うん、うん。あ、ある?分かった、これからそっちに行くから」 ちらりと佐々木の方を窺う。……うん、目はまだ赤いけど、涙は止まったみたいだ。 通話を切ってスマホを仕舞うと、佐々木と目線を合わせる。一一どうか、優しい声が出せますように。 「佐々木、これから時間あるか」 「え、大丈夫、だけど……」 「そう。ならちょっと付き合って」 戸惑いを隠せない顔に、安心させるように笑ってみせる。 「大丈夫、何とかなるから」       ******** 「祐輔(ゆうすけ)」 調理室の前で待っていた千里に片手を上げて答える。 「頼まれた物は中に準備してあるから。ちゃんと先生に許可も取ってある」 「分かった、サンキュ」
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