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「よしよし、いい感じで溶けてきたぞぉ」
大量に買い込んだ板チョコを、鍋に入れて湯煎する。
時折り、“ポコッポコッ”と泡を見ているだけでも幸せな気分に浸れた。
『あら?咲江、ずいぶん早い準備じゃない?
あけましておめでとう』
咲江の母が、キッチンにいる咲江に新年のあいさつをする。
今日は1月1日。元旦だ。
「お母さん、あけましておめでとう。
そろそろ準備しないとさ、きっと間に合わないと思って・・・」
私は、精一杯の笑顔で答えた。
『そ、そう・・・でも、今日は顔色が良いみたいね。お母さんも、何か手伝う?』
母が、少し悲しそうな顔で聞いて来る。
「お母さんが手伝ったら、折角の手作りチョコが、私のじゃなくなるじゃない」
私は、笑いながら母の手伝いを遠慮願った。
そう、このチョコは和樹にあげる特別なもの。
そして、最後のバレンタインデーチョコ。
私は、湯煎したチョコの泡をボーっと見ながら、和樹との幸せを思い出していた。
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