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務めて平静を装ったつもりだった。
母の瞳が、一瞬大きく見開いた。
そして、嗚咽と共に私を抱き寄せた。
先生から、“聞く意思”を確認された後は、淡々としたものだった。
私は、膵臓(すいぞう)癌に侵されていたらしい。
発見が難しく、この病院に来た時は、既にステージ4だった。
要するに、手の施しようがない状態・・・
その日から、余儀なく入院となった。
私は会社を辞めた。
一応メインのデザイナーだった私が抜けたことで、その後会社は大変だったらしい。
結局、ライバル会社に吸収されるという形で落ち着いたようだ。
和樹もその会社で営業をやっている。
私が入院した後も、和樹は毎日のようにお見舞いに来てくれた。
最初は嬉しかった。
でも・・・
入院した時、私の余命は1年だと言われた。
私は、和樹を心から愛していたけど、別れる決心をした
日に日に衰えていく体力。抗がん剤の副作用は想像を絶していた。
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