【しょっぱいチョコ】

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『・・・江。ねぇ、咲江ってば!』 お母さんの呼びかけに、ハッとして我に返った。 『どうしたの?咲江。ぼうっとして。 湯煎、煮立っちゃうわよ』 「え?・・・あっ!本当だ!」 私は、すぐにコンロの火を止める。 「ごめん、お母さん。ちょっと考え事してて・・・ ついでに、このアーモンドの袋開けてくれない? 私の力じゃ開けられなくて」 母は、私の傍に来てシンクの横に置いてあるアーモンドの入っている袋を開ける。 そして、小皿に20粒ほど出してくれた。 『アーモンドは和樹君の好物?喜んでくれるといいわね。 じゃぁ、邪魔しちゃ悪いから、そこのテーブルに座ってるわね』 母が、シンクの向こう側にあるテーブルに腰を下ろした。 私は“ありがとう”と言って、アルミホイルを広げ、ハート形の型を5個並べる。 湯煎した小さな片手鍋を持ち上げるが、今の私には、これが結構きつい。 落とさないように、必死だった。
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