続き

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   マスターの優しい微笑み。  それを見た瞬間に、私の中で何かのタガが外れた。その為に私は、さっき起きた事を話し出していた。  別に、詳細を聞かれた訳でも無いのに。  居酒屋で泣き出した勇人は、そのままの勢いで自分の気持ちをぶちまけた。その姿は、叱られた子供がお母さんに言い訳するみたいに見えた。 「俺の中では、まだ知沙との事が吹っ切れて無かったんだ」  知沙とは、勇人の元カノの事。  その名前は、付き合う前に聞いた事があった。だけど、付き合い始めてから今日まで、勇人はそれ名前を口にはしなかった。  その気遣いだけは、出来てたんだけど。 「だから、若葉と付き合いながらも、ずっと怖がってたんだ」 「怖がってた……」 「知沙からされたような事を、若葉からもされるかもしれない。若葉からも、捨てられるんじゃないかって怯えてた」 「やっぱり、私の事を信じて無かったんだ」
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