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ちょっとでも嬉しくなった自分がバカらしく思えて仕方がない。
せっかく美人の子から、可愛いって言ってもらったのに。
「いきなり入ってきたうえに、なんでそんな失礼な事言うかな」
「まだなんも言ってないけど」
「これから言うつもりだったでしょ!」
まあね、と言いたげに春輝はドヤ顔をしてきた。
ふーんだ。別にいいもんね。
春輝に可愛いって言ってもらいたいとか、別に思わないし。
というのを本人の前で言ってしまうと、また変な風に捉えられてしまうため、ここら辺でやめにしよう。
「えっと・・・」
少し、というかすごく困った顔をしている優梨愛ちゃんは私と春輝を交互に見つめると、
「・・・彼氏?」
と、春輝に聞こえないように声を潜めて言った。
「違うよー、ただの幼なじみ」
「そうなの? 結構お似合いだと思ったけどな」
「「誰がこんなヤツと!!」」
無意識にかぶった言葉が、頭上でこだました。
仲がいいと言われればそうかもしれないけど・・・
コイツにそんな感情を抱いたことなんて・・・
「・・・ない、ない」
私は右手を顔の前でゆっくりと振った。
ホントに、ただの幼なじみ。
子どもの頃から、お互い近くにいない日の方が少なかった。
家も近かったし、比較的人口の少ない地域だから、同じ年の子が他にはいなくて。
毎日一緒に遊んでたっけ。
懐かしいな。
「俺、宇都宮 春輝。奈緒のこと頼むね」
小さい頃の思い出に浸っていると、春輝は優梨愛ちゃんの方へ体を向けて、簡単な自己紹介をした。
一体いつになったら、春輝は私のことを子ども扱いしなくなるんだろう。
いつの間にか、春輝がお兄ちゃんで私が妹、みたいな関係が成立してしまっていた。
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